網膜剥離

網膜剥離とは

目の奥の網膜という神経の膜組織が剥がれてしまい、視野と視力障害を引き起こす病気です。網膜ははがれても痛みはありませんが、治療せずに放置すればしだいに見えなくなり失明に至ってしまう怖い病気です。

痛みがないということは、自覚症状や前兆の症状はないのでしょうか?

初期には飛蚊症といって、視野の中に小さな虫が飛んでいるように感じたり、光視症といって、視野の中をキラキラと光が走るような症状がみられることがあります。また、網膜がはがれてくるとその部分に応じて、カーテンが降りてきたように視野が欠け見えなくなってきます。物を見る中心の黄斑部にまでそれが達すると、急激に視力が低下します。

裂孔原生網膜剥離とは?

裂孔原生網膜剥離は、網膜にできた裂孔(穴)が原因となって起こる網膜剥離です。加齢による硝子体の変化のために網膜が引っ張られ裂孔(穴)が出来たり、若い人の場合は、強度の近視や目の外傷により薄い網膜が萎縮して、円孔という丸い穴ができることがあります。この穴の裂け目から水(液化した硝子体)が入り込んでしまい、網膜がはがれ網膜剥離になります。

どのような治療を行うのですか?

初期の頃は、裂孔ができていても網膜剥離になっていないことが多く、原因となっている裂孔の周りをレーザー光凝固により固め、水の滲出を防ぎます。 網膜剥離まで進行している場合は、手術を行う必要があります。網膜剥離の手術には眼球の外側からシリコンスポンジを当て物を押しつけるように縫いつけて、裂孔をふさぐ強膜内陥術や眼球の内側からガスやオイルを用いて裂孔をふさぐ硝子体手術があります。

症例写真と当院の手術成績

▼当院では日帰り手術で網膜剥離の治療を積極的に行っております

当院は網膜剥離を日帰り手術で治療する国内有数の専門施設の一つです。人口約1万人に一人の頻度で発症する網膜剥離を当施設では毎年約80~90症例を治療しており、増殖硝子体網膜症などの進行例を含めると約100例近い症例の手術を行っております。治療成績について、開院当初から2017年までの裂孔原性網膜剥離初発例の連続症例201眼の手術結果を第253回眼科専門医会(2018年1月11日、岡山市)の特別講演で公開しました。症例の92%が他施設からの紹介患者であり、当院での手術成績(網膜復位率)は、初回復位:97.5%、最終復位率:100%、再手術を必要だった5例を含めた201例の復位に必要な手術回数は1.03回でした。これは従来の入院での手術成績の報告と比較して、ほぼ同等もしくはそれ以上の治療成績が得られました。 欧米諸国では網膜剥離は日帰り手術が一般的であり、今回の当施設での結果から、国内においても網膜剥離の手術治療には入院の時間的、経済的負担を減らせる日帰り手術の選択肢がエビデンスとして証明できました。

参考文献:
1. Kunikata H, Nishida K. Visual outcome and complications of 25-gauge vitrectomy for rhegmatogenous retinal detachment; 84 consecutive cases. Eye 2010; 24:1071-1077.
2. Heimann H, et al. Scleral buckling versus primary vitrectomy in rhegmatogenous retinal detachment: a prospective randomized multicenter clinical study. Ophthalmology 2007;114:2142-54.
3. Oshima Y, Emi K, Motokura M, Yamanishi S. Survey of surgical indications and results of primary pars plana vitrectomy for rhegmatogenous retinal detachments. Jpn J Ophthalmol. 1999;43:120-6.

術前

多発裂孔による裂孔原性網膜剥離

術後

硝子体手術による裂孔原性網膜剥離の治療後
網膜は復位して、視力改善

眼科疾患と治療について