レーシックと眼内コンタクトレンズ(ICL)どっちがいい?
近視・遠視・乱視など視力の問題を解消するためのレーシックとICLには、それぞれ得意とする分野があります。レーシックは、角膜の表面をレーザーで削り取り、その形状を変えることで視力を矯正する手術です。軽度の近視ではICLよりもレーシックの方が適している場合があります。 ICLは、眼内にコンタクトレンズを挿入する手術で、角膜の形状を変えずに視力を矯正します。レーシック・ICLそ…
現在、国内でレーシックと並ぶほど代表的な屈折手術となりつつあるICLですが、ICLが向いている人と向いてない人がいらっしゃいます。
眼科医として手術をお勧めする人、そうでない人について解説いたします。
ICL手術は、手術は、18歳以上の成人を対象とし、老眼を自覚する45歳くらいまでが望ましいとされています。
ICLの特徴として、同じ屈折矯正手術のレーシックよりも適応範囲が広いということがあげられます。レーシック手術が受けられない方も、安心してICLの手術が受けられる場合があります。
レーシックは、角膜の表面を削るので角膜の厚みが十分にあることが手術を受ける上での条件となります。角膜の厚みが足りない場合は、レーシックが受けられません。一方、ICLの手術は、角膜の厚みに関わらず治療が受けられることがメリットです。
ICLの手術を検討する場合、まずはメリットとデメリットを確認しておきましょう。
ICLの手術は自費診療であり、医師側が無理に勧めることはありません。手術は、ICLの適応条件を満たしているか、手術の期待できる効果と引き換えに自分自身にとって犠牲にするものはないかどうかも理解した上で、最終的に手術を受けるかどうかは医師と患者様の合意で決定することになります。近視矯正の治療という観点から、ICLのメリットとデメリットの双方をしっかりと理解する必要があります。長期的にみたときにメリットが上回る方は、ICL手術をお勧めできます。治療によるメリットが小さい方や手術についての理解が十分でない方はお勧めできません。
普段の生活で、眼鏡やコンタクトレンズに不便を感じていない方は、無理にレーシックやICLを受ける必要はありません。
長期的にみた場合に、ICL手術を受けたことで生活の質の向上や目のお悩みの解消ができるかどうか等、手術を検討する際の判断基準の一つとして持っておくことが大切です。
ICLの適応となるのは、18歳以上の成人で上限を厳密には定められておりませんが、45歳くらいまでが望ましいとされています。それは、40~50代の方ですとICLを検討する際に、老眼について考慮する必要があるからです。ICL手術によって遠くがくっきりと見えるようになりますが、老眼を顕著に自覚することで、読書やパソコン業務などの近見作業に老眼鏡が必要になってきます。眼鏡やコンタクトレンズに不便を感じてICL治療を行ったのはいいが、術後の老眼鏡の装用が必要となることをかえって煩わしく思わないかどうか、よく検討する必要があります。
また、60代から加齢による水晶体混濁が徐々に生じ、いわゆる白内障になる頻度が増えてきます、強度近視の方ではさらに若い年齢で始まることもあります。白内障を発症すると、視力回復のためには混濁した水晶体を人工レンズに置き換える手術が必要となります。その場合、不要となるICLレンズを摘出することになります。
ICL手術の適応年齢の上限はありませんが、上記の理由で40~50代の方は老眼や近い将来的に起こりえる白内障も念頭に置いて治療を検討する必要があります。ICL治療を受けた後、長期的にみてご自身にメリットがあるかどうかをしっかりと見極めて慎重に判断しましょう。
なお、白内障の症状がみられる場合、ほとんどの方が白内障手術を近い将来受けることになるかと思います。白内障の眼内レンズには、眼鏡の依存を減らす多焦点眼内レンズなどもあります。白内障手術と同時に老眼や屈折異常の治療も可能ですので、すでに数年後には白内障手術を想定されている方は、ICLは受けないでおくという判断も大切です。
(実例)これまで当法人グループでICL手術を受けた最高齢の方は-12Dの強度近視の52歳の女性の方です。裸眼視力は0.02しかないので、眼鏡やコンタクトレンズなしでは日常生活にも支障があり、災害時の不安からICLを希望されました。事務職のため、元よりコンタクトレンズ装用のうえ老眼鏡をかけてパソコン業務をされていたので、老眼のことを理解されてのICL手術でしたので、術後裸眼視力1.2で近見作業には従来通りの老眼鏡装用で快適な生活を送られております。
医療法人聖佑会 おおしま眼科グループ 代表。
大阪大学医学部卒・医学博士。多根記念眼科病院、大阪労災病院、大阪大学医学部眼科講師、東京西葛西井上眼科病院副院長を歴任。
2014年におおしま眼科クリニックを開院し、2015年に医療法人聖佑会理事長に就任。現在、大阪府下(高槻、八尾、松原)にて眼科手術専門施設3院を統括。年間手術総数5,000例を数える日本有数の日帰り手術施設に成長。
ICL(眼内コンタクトレンズ)みのならず、白内障手術や網膜硝子体手術に対しても幅広い知見と執刀経験を持ち、新しい術式開発で国際的に評価されている。ICL手術をはじめ、年間3000例以上の内眼手術を執刀するかたわら、今も世界各地で講演および手術ライブを行い、米国眼科学会、ヨーロッパ白内障・屈折矯正学会、アジアパシフィック眼科学会、アジアパシフィック屈折矯正学会などにて受賞多数。Best Doctors in Japanを2014年より現在まで6期連続で選出。