ICL手術が向いている人と向いてない人
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは、近視・遠視・乱視などの屈折異常を矯正するために、眼内に微細なレンズを挿入する屈折矯正手術です。 眼内にある虹彩と水晶体の間に装着するレンズで、従来のコンタクトレンズとは異なり、外部に取り付けるのではなく眼内に埋め込むので、日常生活でメガネやコンタクトレンズを使用せずにクリアな視界が得られます。 レーシックのように、角膜を削る必要がない…
近視・遠視・乱視など視力の問題を解消するためのレーシックとICLには、それぞれ得意とする分野があります。レーシックは、角膜の表面をレーザーで削り取り、その形状を変えることで視力を矯正する手術です。軽度の近視ではICLよりもレーシックの方が適している場合があります。
ICLは、眼内にコンタクトレンズを挿入する手術で、角膜の形状を変えずに視力を矯正します。レーシック・ICLそれぞれの治療内容とメリット・デメリット、費用、術後について、以下に比較します。
レーシック | 眼内コンタクトレンズ(ICL) | |
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イメージ | ||
手術の内容 | 角膜の表面をレーザーで削って角膜の形状を変えることで視力を矯正する手術 | 目の虹彩と水晶体の間に眼内レンズを挿入する手術 |
安全性 | 安全性は高い | 安全性はかなり高い |
適応範囲 | 角膜を削る必要があるので角膜の厚さによっては手術が難しい場合があります。一般的に度数が-6.0D以上の近視は慎重実施、-10.0Dの強度近視は手術が受けられません | 適応範囲は-3.00D〜-18.00Dと広く、角膜が薄い方でも受けられる場合が多い |
視力の安定性 | 手術から5~10年で一定の割合で近視が戻るという報告があります | 長期間、回復した視力が安定しやすい |
可逆性(元の状態に戻せるか) | 角膜を削るので元の状態に戻すことはできません | 眼内レンズを摘出すれば、元の目の状態に戻すことができます |
手術費用 | ICLより安価 | レーシックより高価 |
近視矯正の治療として最もよく知られている手術法の1つです。
レーシックは、角膜の表面をエキシマレーザーで削って屈折力を調整するため角膜の厚みが十分にないと手術が受けられません。矯正する視力の度数が大きければ大きいほど、削る量も増えます。近視や乱視が強い方は、角膜を多く削る必要があるため手術に適さない場合があります。手術の適応範囲は近視度数が-6.0Dまでとなります。-10.0D以上の強度近視は適応外となります。
レーシックの手術は累計4000万件以上の多くの症例数があり、20年以上の歴史がある屈折手術として広く行われています。
「エキシマレーザー」の屈折矯正手術への適応は、日本で2000年に厚生労働省から認可されています。レーザー手術は、その過程のほとんどをコンピューター制御のもとで行うので、術者の技量や経験によって左右されることが少ないしかし、術後感染などのリスクは一般的な眼科手術と同様に頻度は極めて低いが皆無ではない
レーシックを受けた直後は、一時的に視界がぼやけて見えることがあります。これは手術中にレーザーで角膜を削ることで生じる角膜表面の変化によるものです。手術後、数時間から数日の間は、目に軽い違和感や光の感受性があるかもしれませんが、これらの症状は次第に改善していきます。手術から数日から数週間かけて視力は徐々に安定していきます。多くの方は、数週間後には安定した視力を獲得し、裸眼で生活することができます。手術自体も短時間のうちに終わり、その日のうちにご帰宅が可能です。早期に日常生活への復帰が期待できます。レーシックは、角膜にフラップと呼ばれる蓋を作成しますが、角膜の知覚神経を遮断するため一時的に涙の分泌量が減って目が乾くドライアイの症状が起こることがあります。また、手術後に光に輪がかかるようなハロー現象や滲んで見えるグレアなどの症状が起こる場合があります。これらの症状は、ICLを受けた方にも見られます。症状は経過とともに自然に消失していきます。
レーシックは、レーザーで角膜を削り屈折を調整するため、元の状態に戻すことはできません。
レーシックの費用は、両眼で20~40万円が相場となっています。乱視があるかどうか、手術の保証内容、追加施術の必要性などによって費用は異なります。保険適用外ですが、ICLの手術費用と比較するとやや安価に受けられます。
ICLは、角膜が薄い方や強度近視の方、軽度円錐角膜の方も手術が受けられます。
視力の矯正範囲は、-3.00D~-18.00D(-15.00D以上は慎重実施)と範囲が広く、レーシック手術が受けられない方も安心して手術が受けられます。
手術は、約2.8~3mmの小さな切開創からレンズを挿入していきます。手術時間は、両眼で10~15分程度で終了します。切開創は、縫合の必要もなく自然に治癒します。ホールICLと呼ばれるレンズの真ん中に穴が開いた形状のものを使用することで、房水の循環が確保されたことにより、過去に危惧された白内障や緑内障のリスクを大幅に軽減することができました。
ICLは、眼の中に入れておける安全性の高いレンズを使用して手術を行います。手術後は特にメンテナンスの必要もなく、長期間にわたって安全に使用することができます。レンズは、生体適合性の高い柔らかい素材で作られているので、眼内で割れる心配もありません。ただし、乱視用のトーリックレンズは、稀に強い衝撃などが加わると眼の中でレンズが回旋して乱視の軸がずれてしまう恐れがあります。この場合、レンズの位置を修正するための再手術を受ける必要があります。
レーシックのように角膜を削るわけではなく、目の中にレンズを挿入する手術なので、レンズを取り出して元の状態に戻すことは可能です。レンズは、半永久に挿入できますが、別の眼科疾患などの理由からレンズを摘出しなければならない場合などには、安全に配慮して取り出すことができます。
ICLの費用は、両眼で50~70万円と高額で、自費診療のため価格を医療機関が設定するため費用に幅があります。
上記の理由により、レーシックと比較すると価格がやや高く、さらに医師の技術や医療機関によって費用に差が出ます。
レーシックとICL、それぞれのメリット・デメリットから適応範囲、手術内容、安全性などを解説いたしました。両方の手術に言えることは、どちらも安全性が高く症例数が豊富で確立された治療法ということです。
費用でみると、ICLよりもレーシックの方が費用負担を抑えられています。しかし、見え方や元に戻せるか、適応範囲などでみるとICLの方が利点が多いといえるでしょう。いずれの手術も術前検査や術後の定期健診が重要で、近視の度数が低い方等の場合には、レーシックの方が好ましい場合もありますが、そもそも近視矯正手術が必要かどうか、慎重に検討すべきであります。
レーシックとICLには、それぞれの得意とする領域があり、どちらのほうが優れていると一概に断言できませんが、可逆性であること、グレア・ハロー・ドライアイが少ないこと、強度近視にも対応できることから、最近ではICLがより好まれる傾向があります。
おおしま眼科グループでは、患者様の状態をしっかりと診た上で、一人ひとりの眼の状態に合わせてICLに関する施術の適応やリスクを総合的に判断して、ベストな近視治療の選択肢をご提案いたしますのでお気軽にご相談ください。
医療法人聖佑会 おおしま眼科グループ 代表。
大阪大学医学部卒・医学博士。多根記念眼科病院、大阪労災病院、大阪大学医学部眼科講師、東京西葛西井上眼科病院副院長を歴任。
2014年におおしま眼科クリニックを開院し、2015年に医療法人聖佑会理事長に就任。現在、大阪府下(高槻、八尾、松原)にて眼科手術専門施設3院を統括。年間手術総数5,000例を数える日本有数の日帰り手術施設に成長。
ICL(眼内コンタクトレンズ)みのならず、白内障手術や網膜硝子体手術に対しても幅広い知見と執刀経験を持ち、新しい術式開発で国際的に評価されている。ICL手術をはじめ、年間3000例以上の内眼手術を執刀するかたわら、今も世界各地で講演および手術ライブを行い、米国眼科学会、ヨーロッパ白内障・屈折矯正学会、アジアパシフィック眼科学会、アジアパシフィック屈折矯正学会などにて受賞多数。Best Doctors in Japanを2014年より現在まで6期連続で選出。