レーシックと眼内コンタクトレンズ(ICL)どっちがいい?
近視・遠視・乱視など視力の問題を解消するためのレーシックとICLには、それぞれ得意とする分野があります。レーシックは、角膜の表面をレーザーで削り取り、その形状を変えることで視力を矯正する手術です。軽度の近視ではICLよりもレーシックの方が適している場合があります。 ICLは、眼内にコンタクトレンズを挿入する手術で、角膜の形状を変えずに視力を矯正します。レーシック・ICLそ…
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、目の中に特別なレンズを埋め込むことで、近視、遠視、乱視などの屈折異常を矯正し、裸眼での生活を可能にする方法です。
この手術は「有水晶体眼内レンズ」とも呼ばれ、自身の水晶体を温存したまま行うため、自然な見え方やピント調整機能を保持しながら視力を改善します。
ICLはその安全性と効果が広く認められており、世界で200万眼以上の手術が行われています。レーシック(LASIK)手術と比較しても、ICLは角膜を削らないため、より広い適応範囲を持ち、レーシックでは適用外だった方でも手術が可能な場合が多いです。この広い適応範囲から「誰でも受けられるか?」という疑問が生じることもあります。
人間の眼は成人になるまで成長し続けます。
近視の主な原因の一つに「眼軸(目の奥行き)」の伸びがあり、これが成長期に特に進むため、この時期は視力が変動しやすいとされています。
21歳未満の方は外部環境のストレスによる視力変動も多く、ICL手術後に度数変化が起こりやすいため、手術してもレンズの摘出や交換が必要になるリスクが高まります。このため、21歳未満は通常、ICL手術の適用外とされていますので、個別の事情がある場合には手術を受ける希望の医療機関でよく相談することをお奨めします。
ICL手術に年齢の上限は定められていませんが、一般的に45歳までが望ましい時期とされています。
これは、45歳以降には老眼、さらに50歳以降では白内障などの加齢に伴う眼疾患のリスクが増加するからです。一方では、強度近視ために災害時にもし眼鏡やコンタクトレンズが紛失した場合、生活や活動大きく支障が出てしまう懸念があって、ICLをご希望される切実な事情もあるので、メリットとデメリットをよく理解のうえ、手術を受ける希望の医療機関でよく相談することをお奨めします。
なお、老眼の基本的な治療方法としては、老眼鏡を使用して視力を矯正することが一般的です。一方、老眼鏡の使用頻度を減らしたい、裸眼で日常生活を送りたい場合は、老眼対応の「多焦点IPCL」というレンズもありますが、国内未承認であり、国際学会での報告では治療成績が施設によってばらつきがあり、まだ確実性の高いレンズと言えないので、現時点では当院では推奨しておりません。今後の改良によって、近い将来、国内認可が得られることを期待したいところです。
もし年齢的に白内障が既に始まっている場合は、視力改善するためには、ICL手術ではなく、混濁した水晶体を除去して人工眼内レンズを挿入する白内障手術(水晶体再建手術)を行うこととなります。その場合、「多焦点眼内レンズ」を使用した白内障手術を選択することで、白内障の除去と同時に老眼と屈折異常を改善することが可能です(詳細は次の項目を参照)。
白内障は、水晶体が老化することによって視界がかすむ病気で、老眼とは異なり、水晶体自体の濁りが特徴です。白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、その代わりに単焦点または多焦点眼内レンズを挿入します。これにより、ピント調整の自然な能力は失われますが、多焦点眼内レンズを使用することで、白内障と共に老眼やその他の屈折異常も改善し、老眼鏡やメガネの使用頻度を減らすことが可能です。
早期の白内障手術で多焦点眼内レンズを選択することは、老眼の進行も考慮して効果的です。
しかし、多焦点眼内レンズにはコントラスト感度(見え方の質)の低下や、ハロー・グレアが現れるなどのデメリットもあります。そのため、眼内レンズの選択は将来の生活の質に大きく影響するため、種類や特性、メリット・デメリットをよく理解した上で慎重に選ぶことが重要です。
ICLの適応年齢は、21歳から45歳まで(明確な年齢上限はなし)とされています。しかし、40代後半の方がICL手術を検討する際には、現在の老眼の症状と将来的に白内障が発症する可能性を考慮することが重要です。
老眼が進行している強度近視の方で、災害時の裸眼視力に不安がある場合、現時点ではICL手術を考慮しても、術後の老眼対策にはやはり必要時の老眼鏡での対応が無難であり、また、すでに白内障がある場合には、ICLではなく、白内障に対する水晶体再建術および多焦点眼内レンズを用いることで、老眼および屈折異常の改善を図る選択肢があります。
当院では、患者様の目の状態や年齢、ライフスタイルに合った最適な治療の選択肢を提案致します。
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医療法人聖佑会 おおしま眼科グループ 代表。
大阪大学医学部卒・医学博士。多根記念眼科病院、大阪労災病院、大阪大学医学部眼科講師、東京西葛西井上眼科病院副院長を歴任。
2014年におおしま眼科クリニックを開院し、2015年に医療法人聖佑会理事長に就任。現在、大阪府下(高槻、八尾、松原)にて眼科手術専門施設3院を統括。年間手術総数5,000例を数える日本有数の日帰り手術施設に成長。
ICL(眼内コンタクトレンズ)みのならず、白内障手術や網膜硝子体手術に対しても幅広い知見と執刀経験を持ち、新しい術式開発で国際的に評価されている。ICL手術をはじめ、年間3000例以上の内眼手術を執刀するかたわら、今も世界各地で講演および手術ライブを行い、米国眼科学会、ヨーロッパ白内障・屈折矯正学会、アジアパシフィック眼科学会、アジアパシフィック屈折矯正学会などにて受賞多数。Best Doctors in Japanを2014年より現在まで6期連続で選出。