黄斑円孔

黄斑円孔とは

網膜の中心部の中心窩に穴(孔)があいてしまう病気です。加齢による硝子体の変化のために網膜が引っ張られ穴ができることが原因です。穴自体は直径1ミリメートルに満たないとても小さなものですが、最も視力が鋭敏な部分にできるため、大きな影響が現れます。完全な穴が形成されてしまうと、視力は0.1前後まで落ちてしまいます。この病気は硝子体の収縮が関係して起きるため、後部硝子体剥離が起こる60代をピークに、その前後の年齢層の人に多発します。特に、硝子体の液化が進みやすい近視の人や女性に多い傾向があります。

中心窩(ちゅうしんか)に穴があくと目にどのような影響がありますか?

網膜は、カメラで言うとフィルムにあたる部分ですが、その中でも一番大切な中心部分が中心窩です。中心窩は直径約0.35ミリメートルで、周囲の網膜より少し凹んでいます。中心窩の網膜は、錐体細胞という鋭敏な細胞が存在し、高い視力を得るための特殊な構造になっています。このため中心窩に穴があき機能が失われると、ほかの部分の網膜は健康でも、視力は極端に低下してしまいます。

どのような治療を行うのですか?

黄斑円孔は、1980年代までは治療法がありませんでした。しかし、今では硝子体手術によって約90%以上の円孔閉鎖率が得られ、視力を取り戻せるようになりました。

どんな手術を行うのですか?

硝子体の牽引をなくすために、硝子体を切除する手術を行い、眼球内部にガスを注入します。

術後は円孔周囲の網膜がガスで抑えつけられている間、円孔が小さくなっています。すると、円孔中心に残っているわずかな隙間に周囲の細胞をつなぎ合わせる働きをする細胞(グリア細胞)が現れ、円孔を完全に塞いでくれます。

手術は局所麻酔で約1時間程度ですので、日帰り手術で行うことができます。

術前後の特発性黄斑円孔の症例

  • 術前

    術前
    特発性黄斑円孔、視力(0.3)です。

  • 術後

    術後
    硝子体手術による内境界膜剥離を行い、ガスタンポナーデと術後3日間のうつむきを行った。円孔は無事に閉鎖し、術後1ヶ月で視力は(0.8)まで改善しました。

手術後の安静、体位で気をつけることは?

ガスは気体のため、常に眼球の上に移動してしまいますので、術後しばらくは、ガスが円孔部分からずれないように、うつむきの姿勢が必要です。横たわっても結構ですし、座っても結構ですが、後頭部が頂点になる姿勢をとってもらうことが必要です。うつむきの期間は3日~1週間が目安です。これを守らないと、再手術が必要になる確率がやや高くなります。

術後の視力はどれくらい良くなりますか?

術前に0.3だった視力が1ヶ月ほどで0.5~0.7程度になります。そのあとは中心窩の組織が修復されるとともに、ゆっくりと回復していきます。一回の手術で8~9割の人は、不自由なく暮せるレベルの視力に戻ります。

手術の合併症は?

注意が必要なのは、網膜裂孔と網膜剥離です。眼球の前方に残してあった硝子体(前方の硝子体は網膜と強く癒着しているため切除できません)が収縮し、網膜を引きちぎるような力が加わるために、網膜裂孔・剥離が生じます。術後数カ月から約1年の間に約3~5パーセントの人に起こります。裂孔や剥離は、視野が欠けたり、視力が著しく低下する原因となる、治療の緊急性が高い病気です。ですから術後はなるべくこまめに検査を受けるとともに、見え方の変化に気をつけて、異常を感じたらすぐに受診してください。なお、手術の合併症で一番多いのは白内障です。60歳以上の患者さんなら2年以内で80パーセント近く起こります。このため多くの場合、黄斑円孔の手術と同時に白内障手術も行います。

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